天邑の燎煙 (幻冬舎文庫)



天邑の燎煙 (幻冬舎文庫)
天邑の燎煙 (幻冬舎文庫)

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滅びゆく王朝の悲哀

 商王朝最後の王である受王は、勇猛で英明な君主であった。それなのに、なぜ商は滅びたのか。この作品を読むと、王朝には命数というものが本当にあるのではないかと思えてきます。商が滅びたのは、商という王朝自体が、その時代に適合しなくなっていたから。祭祀が至上の権威をもち、人身御供を捧げるやり方は、もう時代遅れであった。王は誰よりもそれを理解していた。しかし他の群臣にはそれがわからない。群臣にとって、王の改革を認めることは、自分たちの既得権益を失うことであり、とうてい認められない。かくして王は孤立し、王朝は破滅に向かって突き進む。
 商王朝の軋みにめざとく気付き、野心の牙を研いでいたのが周。周にはもちろん太公望がつきますが、この太公望は非常に人間くさいです。宮城谷昌光の太公望は、人間といっても、かなり超人的な面があり、性格も高潔な人でしたが、こちらの太公望は泥臭いです。彼を動かす原動力はただ一つ、商への復讐心だけ。人民のためになどとは、欠片も考えていません。
 通常、商滅亡の原因は受王の暴虐ぶりにあったとされていますが、それはあくまで勝者の理屈。臣下の身でありながら、商を討った周にしてみれば、商が悪者でないと具合が悪いのです。ぜひ一度、周を悪玉として描くこの作品も読んでみてはいかがでしょうか。



幻冬舎




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