ハル・ノートを書いた男―日米開戦外交と「雪」作戦 (文春新書)



ハル・ノートを書いた男―日米開戦外交と「雪」作戦 (文春新書)
ハル・ノートを書いた男―日米開戦外交と「雪」作戦 (文春新書)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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本書の存在意義は高いけど

太平洋戦争前の日米交渉が実は一年近くもの「擦った揉んだ」だったということは
案外知られていない。いきなりハル・ノートが出てきたと思っている人が多くて、
あきれかえることが多いのだが、その日米交渉全体を簡潔にまとめた本書は、
その意味で存在意義が高い。

しかし後半、いきなり「雪」作戦の記述になると話がせせこましくなる。
学問的検証をまだ十分に経ていない、冷戦直後に仕事がなくなってしまった
ソ連工作員の証言を生で再録までしてしまうあたりは、本書の価値を随分
下げてしまっている。
しかもこの「新しい説明」を取り上げてしまったために、ハル・ノートの
出現状況についてのオーソドックスな説明や推測などがごっそり抜け落ちて
しまっており、このあたりについて知りたい人には役に立たないばかりか、
ソ連の陰謀という新説(?)だけが浮き彫りにされてしまっている。

前半だけは、日米交渉の概要について知りたい向きには役に立つ。
ハル・ノートとは何だったのか???ソ連の工作は、日米開戦に何処まで影響を与えたか?

 1995年11月21日(火)、毎日新聞(朝刊)は、その一面で世界的スクープを報じた。それは、日米開戦の切っ掛けと成ったハル・ノートの作成に、ソ連の工作が有ったとする記事で、それに依れば、日米開戦の直前、ソ連情報部は、ハル・ノートを書いたアメリカ財務省の特別補佐官ハリー・デクスター・ホワイト(1892?1948)にワシントンで、ソ連工作員ヴィタリー・パヴロフらを接触させ、アメリカの対日政策をソ連に有利な物とすべく、アメリカの対日要求を、強硬な物に誘導したと言ふ。同年、NHKも、特別番組でこの事を取り上げたが、本書の著者、須藤眞志氏は、そのNHKの番組制作に加はった政治学者である。
 本書における著者の分析を要約すると、この「雪作戦」と名付けられたソ連のホワイトへの工作は、確かに、ハル・ノートの作成に大きな影響を与え、結果的に日米開戦を促す一因と成ったが、ソ連が意図した事と、ハル・ノートの実際の内容には解離が有り、ハル・ノートの内容が、全て、ソ連情報部の工作の産物であったとする解釈は、正しくないと言ふ事である。ハル・ノートについて言へば、恐らくその通りなのだろう。ただし、当時のルーズヴェルト政権についての著者の記述は好意的すぎるし、分析が表層的である。そして、逆に、松岡外相などに対しては、否定的記述が過剰である。??貴重な本だが、掘り下げが浅く、バランスを欠いて居る。この本だけで日米開戦への流れを理解する事が、出来無い事は明らかである。

(西岡昌紀・内科医/「A級戦犯」と呼ばれた人々が、処刑された日に)
力作ではあるが…

 須藤教授のこの著作は力作であるが、非常に残念な作品でもある。
KGB将校・パブロフの証言をそのまま検証せずにそのまま掲載してしまった点がこの本の本質かもしれない。
 須藤教授が書くのを躊躇ったニューディーラーとKGBスパイの親密さは、ジョン・コールマン博士の著作「真珠湾 日本を騙した惡魔」を示すまでも無く日本語の著作でも多數あるので参考にされたい。
 雪計画とは何ぞや、と、初心入門的な著書としては十分読み応えはあるが、研究用には読みが浅いといえるかもしれない。
harry dexter white 一対何者なのか

この人物いまだに良くわからない。最近のIMFのSTAFF PAPERSに掲載されていた論文によると、ソビエトのAGENTとの接触はあくまでも彼の当時の職責に鑑みて、必ずしも無理がないものだったと、したがって彼のソビエトのスパイ説は証明できないと、結論付けられている。AGENT自体はみんな本来の職務を偽って彼に接触してきたわけだから。でもこの雪作戦のAGENTとの接触を見る限りにおいては、少なくとも、UNCONSCIOUS AGENT OF INFLUENCEとしての役割を限りなく示唆する。



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