土方が守りたいものとは・・・
「燃えよ剣」の影響を強く感じる作品なので、それが好きな方は入り込みやすいと思います。
沖田と土方の描かれ方もほぼ同じで、私はあの独特の信頼関係が大好きなので、そこはとても楽しく読むことができました。
ですが、土方に「自分は新撰組のために鬼となる」と言わせつつ彼の優しさも強調しようとした結果なのか、隊士や土方の行動にちぐはぐな印象を多く受けました。
たとえば油小路事件では、土方は藤堂をさりげなく逃がそうとしますが、その意図を知らずに藤堂を斬った隊士を土方は「散々藤堂に世話になっておきながら士道不覚悟」として斬ってしまいます。
私の頭のなかは「???この隊士は任務を遂行しただけなんじゃ・・・??」状態でした。
一体この土方の考える士道とは組織とはどういうものなのか私にはよくわからず、結果、彼から優しさや鬼の苦悩を感じることはできませんでした。
また柴司切腹事件や河合斬首事件についても、史実がだいぶ美化されて描かれているような印象を受け、やはり違和感を感じました。
文章自体には好感が持てたこと、作者の土方や新撰組に対する愛情はとても伝わってきたこと、そして沖田など数名の人物の描かれ方は魅力的だったことから、星3つにさせていただきました。
個性や面白さが欠けている
この著者の沖田総司を扱った本のレビューにも出ていましたが、 「文章に魅力が無さ過ぎる」 という意見に、自分も全く同感です。 真面目な姿勢はうかがえるけど、教科書風とでも言うか・・・ お勉強をさせられてるみたいな味気ない気持ちになってしまう。 心理描写が少ないせいか感情移入もしづらくて、けっこう読むのがしんどかったです。ただ、著者のお人柄か文章や作風にイヤラしい所が無かった。 「個性」も「言葉」も関係ないという、活字中毒の人には受けるでしょう。
すでに優れたレビューは出ておりますが
自分は土方と同じ日野市出身。だから土方歳三は自分にとっては ごく身近な印象の人。 当然、「燃えよ剣」も読んでるが、この作品の土方さんは自分にとって 理解できる「配慮」や「苦悩」が感じられてよかった。 脇役的活動をしてきた隊士に対するねぎらい。 わずかな不運のために切腹しようとする隊士のために 不利なケンカを買おうとする人情。 それなのに、沖田あたりを除けば古い同志ほど理解してくれない辛さ。 それでもこの作品の全体の雰囲気は「わかりあった人間関係」という印象が 強いが、読むほどに、考えるほどに、鬼に徹するために孤独をかこった 土方の強さ、寂しさのようなものが感じられる。
切なさと愛しさが溢れる作品
土方さんがしっかり多摩っ子らしい作品。 あくまでも自分らしさを見失わず、それでいて新選組副長として「鬼」たることを自らに強いた姿がじんときます。 でもってそんな土方さんを脇がちゃんと理解してるとこが、かなりツボでした。 その筆頭が斎藤一! 登場シーンは少ないのに、めっさ印象的に出てくるのが嬉しいし、土方さんの純粋な根っこの部分をちゃんと解ってるから、「鬼」と恐れられる土方さんに諭されてもなかなか退かないとこがまた、素敵だ斎藤一!!(萌) そしてオイシイのは、土方さんが「新選組」という組織の「誠」を未来に託した人であるってトコ!!これですよ!!これ!! 二人の訣別に対するこの作品の解釈は、話の流れからいってモロ同感です。 藤堂平助とのエピソードも泣かせます‥‥。 油小路の決闘に臨む土方さんの心理が、切なくて苦しくて。 平助には格別な想いがあるんだけど、それでも対峙しなければならない土方さん。 そして平助は、立場を異にした今もなお、新選組や土方さんがすごく好きなんだけど、自分の選んだ道を悔いてなくって、笑って土方さんに面つき合わせてて‥‥‥ああ、平助らしくていいなぁ。 お互いがお互いを解りすぎているから切ない、二人の姿が美しいです。 さらに意外なくらい土方さん命な山崎烝サンも、これまた痛いくらいの土方さんへの傾倒っぷりで、ぐっときました。 あと、河合耆三郎がすごくイイ子で‥‥‥土方さんの胸中の辛苦をクローズアップさせるための人物設定なのでしょうが、河合自身の背景にあったものを知りたくなるような人物像でした。 広瀬氏の筆運びはちょっと司馬遼太郎先生に似ているとこがあり(作者としての立場を明確にした地の文。閑話休題的文章をもってくるトコ)、『燃えよ剣』がきっちり踏襲されてるような観があります。 『燃えよ剣』で新選組にハマッた人なら、いっそう楽しめる本かもしれません。
土方さんの悲哀が描かれています
このところ、立て続けに土方さんに関する小説・書物を読んでいます。 中でも、この小説の土方さんほど悲哀が感じられる人物はありません。 近藤勇という将器を持つ男を立てるために、自分はひたすら汚れ役に徹し、 周りから恐れられ、嫌われても自分の信じた・ホレた男のために尽くし続ける姿は胸を締め付けられます。 この本の土方さん本人も、苦笑しつつも「それが自分の役割だ」と割り切って、 近藤勇・新選組のために尽くします。 読みながら、「あぁ、どうして回りに彼の気持ちをわかってあげられる人がこんなにも少ないんだ...」と歯軋りしたくなるほどです。 優男だった歳さんが、”鬼”にならざるを得なかった状況が、 よくわかる1冊です。
小学館
歳三 往きてまた (文春文庫) 近藤勇 (時代小説文庫) 土方歳三―新選組の組織者 (KAWADE夢ムック) バラガキ―土方歳三青春譜 (講談社文庫) 紅の肖像―土方歳三
|