ハプスブルクの宝剣〈上〉 (文春文庫)



ハプスブルクの宝剣〈上〉 (文春文庫)
ハプスブルクの宝剣〈上〉 (文春文庫)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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宮廷外交のエッセンスを満喫

ハプスブルク家を中心にしたヨーロッパ外交のエッセンスが、小説の楽しみと共に理解できる興味深い本である。フランスとオーストリーが覇を競い合った17世紀末から18世紀の前半にかけて、マリア・テレジアが未だ若かった時代のオーストリーに対し、新興のプロシアの若きフリードリッヒ大王が挑戦する軍事と外交の歴史を背景にして、複雑怪奇な政治交渉についてのとてもいい解説書になっている。これを読むだけで小泉や安倍という全く無能な政治家が、外交のイロハも分からずに日本の立場を損なっている様子が、嫌というほど痛感させられるのは作品の持つ説得力のせいだろうか。登場人物は多彩だが実証的に書かれているので、若い人が日本の外交のダメさ加減を知るために、この本を読んだら良いのではないかと思った。

18世紀ヨーロッパを理解することができる

18世紀ヨーロッパ、国民国家成立前の政治状況と、当時のユダヤ人の社会的位置づけのようなものを、
小説を楽しみながら理解することができます。
当時の国家というものは所詮王族の持ち物であり、王族の結婚ひとつによって領土範囲が変わってしまうという、
今では考えられないような出来事が、なぜ起こりえたのか、史実を追いかけるだけでは分からないことが伝わってきます。
(要は国民国家が成立していなかったことに尽きるわけですが)
また、ユダヤ人については、ナチスによる大虐殺が起こった下地のようなものが、ヨーロッパ社会に古くから存在しており、
それが単なるヒトラー個人の暴走によって生じたものではないことが分かります。
小説の楽しみ以上に、有益な情報を得ることができました。
王朝史を背景に自己を求める青年の物語

主人公が自己と民族/文化の狭間で葛藤し続けるつつ成長をしながら苦悩、絶望、野望、挫折そして再生を経る過程に一貫性があり、この本の強さがある。加えて当時欧州を馳せた歴々の登場人物がどれも人柄豊かに描かれており愛着が持てる。
ハプスブルグ王朝史に限らず当時のヨーロッパ一体の動向やエピソードが、綿密な史実調査の賜物であると同時に、堅くなく紹介している所が流石。特に面白かったのは、1)あまり取り上げらることのない中近代何百年にわたる欧州でのユダヤ差別/迫害。ナチス統治下でなくともユダヤ人は第二市民扱いされ、職業/居住の自由を持たず、穢れた者として侮蔑され、追放され、スケープゴートとして殺されることも多々あったに違いない。本書にも些細な争いから村人がユダヤ人狩りを行う場面が登場する。ハプスブルグ王朝における統治者オーストリア/ドイツ人以外の民族の生活は恵まれないものだったに違いない。この点に目を向けた筆者を高く評価したい。
2)巻末の批評にあった通り、ハプスブルグの多国籍軍の内情が緻密に、実に面白く書かれている。ドイツ系、ハンガリー系、クロアチア系、etc.言葉も文化も異なる混成軍の統率が如何に困難であるか、加えてハプスブルグ優位主義の指揮官の下であったなら混沌を極めるも必須。対してプロイセン軍はカリスマ国王フリードリヒ統括の下鍛え抜かれている。戦況は如何に!? 戦場でのやり取りなどが目に浮かぶ様であった。
唯一合点がゆかなかったのは、主人公がなぜそれまで小馬鹿にして来た様なデレーゼに恋したのか。それ以外は全て満足のゆくプロット満載でとても楽しみました。
ある意味、不思議な青春群像

この話の主体はユダヤ人として生まれたことによって
多くの困難に囲まれ、苦悩にさいなまれる青年エリヤーフーが
自身の才能によって道を切り開いていく物語である。

ヨーロッパにおいてユダヤ人が差別される実態、
ユダヤ人社会の持つ欠陥、
当時の王侯貴族たちの宮廷での生活、
細かいところまでよく調べてあるので、物語の世界に入っていきやすい。

女性に生まれたハンデを背負いながら
帝位を勝ち取ったマリア・テレジアの存在感が素敵。
そしてエリヤーフーの主君となったフランツの
さりげない処世術が微笑ましくもある。
エリヤーフー、マリア・テレジア、フランツの3人の
政治と恋がからみあった三角関係が面白かった。
もう何度読み返したことか

藤本氏は私の好きな作家の一人ではありますが、中でもこれが一番のお気に入りです。
購入してからウン年、何度読み直したことかわかりません。
ユダヤ人である運命に逆らいながらも翻弄されていくエリヤーフー、それでもあるいは貪欲にあるいは潔癖に生きていく姿に、先を知っていても読み進めていくのが楽しみな作品です。
ぜひ、何が何でも読んでいただきたい。
ちなみに、ベスト2は「ブルボンの封印」です。



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